はじめに

今回は、「AD/HD・LD」の障がいの理解について説明します。

この二つの障害特性を持つ方々は、大きな知的障害の遅れが認められないため
学童期は、普通学級で過ごしている事がほとんどです。

しかし、知的発達に遅れが無いという事は、「自分の置かれている状況が理解る」
という事です。

それだけに、非常に傷つきやすく繊細であるともいえるのではないでしょうか。この辺りについては、アスペルガー症候群(AS)や高機能自閉症(HFA)、協調性運動障害(DCD)の方たちも同じです。

AD/HDの理解

(1)名前の由来

一昔前、「のび太・ジャイアン症候群」と言われ話題になり新しい障害と思われたかもしれませんが、100年以上前から医学書では確認されているものです。

落ち着きがない(多動)、衝動的、不注意が大きな特徴ですが大きく分けると、落ち着きがない(多動)、衝動性が目立つジャイアンタイプのものと不注意が目立つのび太タイプの二つに分けられます。

また、多動というと「AD/HD」という名称がよく使われます。この呼び方は、アメリカ精神医学会の診断基準第4(DSM)にある診断名で日本語に訳すと「注意欠陥/多動性障害」という意味になります。

別に、「多動性障害」という言い方もあり、これは世界保健機構(WHO)による国際疾病分類第10版(ICD)による名称です。考え方や内容に多少の違いはありますがほぼ同じ内容なので「AD/HD」とします。

(2)診断基準と出現率

判定は、共にいくつかの項目を用意して、これを満たしているか否かで判断する「操作的診断基準」です。あくまで精神科における医学的診断名でありいわゆるこれまでの知的障害を伴う「障害」ではありません。

この診断は、7歳以前に症状が出現しており、家庭・学校・診察室などのいずれか2ヶ所以上で症状が確認されることが診断の条件となります。

一般に男性の方が女性の数倍も多いと言われますが、「女子では多動が目立たないので見逃される」との指摘もあります。女性に対して、4~9倍も男性が多いいと言われますが
実はそれほど男女差は無いという研究者もいます。

日本国内の児童期の出現率は、5%~10%と言われています、15年前は日本国内の統計は報告されていませんでしたが、15年前のアメリカでは3%~5%、現在は5%~10%と、日本と同様の出現率となっています。

(3)健常者と「AD/HD」の人の違いは

私たちは見たり聞いたりしたこと、過去の経験や知識などに蓄積された情報を脳のいろんな部位から集め、それをうまく統合して行動や感情を引き起こしています。

「AD/HD」の方は、この脳の細胞同士の連絡に必要な神経伝達物質(ドーパミンやノルアドレナリンなど)の量がアンバランスになっているため、行動や感情をうまくコントロール(抑制)できなくなり、行動や活動が非常に活発(多動)になったり衝動的で注意力が散漫になったりしてしまいます。

(4)多動性障害と多動の違い

多動性障害とは、「行動的に動きが多い状態」を指します、良く動き回るというだけでなく「多動」を中心にして「衝動性」と「注意欠陥」の3つを主症状とする症候群を指します。

多動のみの場合は、単に落ち着きがなく動き回るのみとなり、「衝動性」と「注意欠陥」を伴いません。

「多動性」

手足をそわそわ動かす、椅子に座ってもモジモジする、体をクネクネしたり動き回る、離席が多い、待っていられない、イベント毎で張り切る。
「衝動性」

質問や話が終わる前に話し出す、順番を待てない、考えなしの動き、会話やゲームでじゃまをするやいきなり解答を言う、不適切なほど過剰に喋る。
「注意欠陥」

うっかりミス、言われたことを聞いていないように見える、注意や集中力を持続できない、外や周りの刺激に注意がそがれる、物を壊す、物を忘れる。
物を紛失する、着替えが遅い、物事をパッと見て判断するが間違える、早合点をしやすい、最後まで計画を推し進めることが出来ない。